
世界で最初の冠動脈インターベンションのライブデモンストレーションが行われたのは今から40年以上も前にさかのぼる1978年のことでした。バルーンカテーテルを用いた形成術、いわゆるPTCAの生みの親であるAndreas Gruentzigがこの手技を広めようと世界中から多くの医師を自施設のカテーテル室(カテ室)に迎え入れたところから始まりました。当時30代後半のGruentzigは年齢からして病院でも下のほうから数えるほうが早く、同僚や上司からもカテ室に見知らぬ人が集まることをよく思われず、彼に院外の人をカテ室に入れることを咎めるようになりました。血気盛んな年頃のGruentzigは自ら正しいことをしているのに否定されることに納得がいかず、何か良い方法がないものかと深く考えて思いついたのがライブデモンストレーションの始まりだと言われています。一つの場所に学びたい人が学び、カテ室からその模様を中継するという形態が広がり、カテーテルインターベンションは欧米、そして、日本を含むアジアで瞬く間に普及するようになりました。
ライブが教育のツールとして盛んに行われた1980年代から1990年代は大腿動脈からの穿刺から始まり、PTCAの適応であった単純病変と言われるタイプAやB病変に対する治療が行われていました。当時は、デバイスも今からでは考えられない大径のカテーテルを用いて治療していたので、術後の圧迫止血にも苦労する時代でした。90年代にステントが登場しました。その頃一世を風靡したPalmaz-Schatzステントは、ステント単体で販売されていましたので、バルーンに乗せ換える様子からライブで放映されたものです。その頃から徐々に複雑病変に対するカテーテル治療もライブで見せるようになりました。ステントがプリマウントされて販売され、第二世代、第三世代へとデリバリー性能や追従性が向上したことが複雑病変へのアクセスを容易にしました。我々は、PTCAからPCIへと移行し、デバイスが盛んに開発されたことでカテーテルインターベンションのさらなる可能性を追求し始め、その成果をライブにて多くのインターベンショニストに伝授してきました。
2000年代になり、薬剤溶出性ステント(DES)が登場しました。日本に正式に導入されたのが2004年ですので今から18年前になります。冠動脈バイパス術の役割をなくすとまで言われた究極のデバイスの登場により、カテーテルインターベンションの適応はさらに拡大しました。適応の拡大はデバイスの革新のみならず、医師の治療技術も同時に向上させねばなりません。日本のコンプレックスインターベンションをリードした私、加藤修先生、玉井秀男先生の3人はこの重責をComplex Cardiovascular Therapeutics (CCT)を通じて果たし、自らが培った技術を世界に発信してきました。ライブの役割が変わり始めたのはこの後からでした。デバイスや技術が成熟し、一定の経験を積めば誰でも治療ができるようになり、ライブは教育目的から毎週のように全国で開催されるショーになりつつありました。時代の流れもあり、各地で開催されるライブの多くは人が集まらずにファカルティに招かれた医師と企業関係者のみとなる会も増え始めました。
そのような中、2019年12月にコロナウイルスの感染拡大が起こり、世界各地でイベントが相次いで中止・延期を余儀なくされました。我々の領域ではライブや学術集会がその対象になりました。2020年上半期までライブや学会は開催されずに下半期からオンラインという形式へと移行しました。オンラインではどこからでも気軽に視聴できることが幸いしてこれまでライブに参加できなかった若い世代が参加できるようになりました。しかし、オンサイトで体感できる臨場感がオンラインでは実感できず、どのライブも差別化することが難しくなり、集客への課題が見えてきました。集客の低下は企業スポンサーの投資への意欲を損なわせライブの存続にかかわり、業界の低迷にも直結します。我々はこの状況を放置せずに、豊橋ライブをポストコロナ下で時代に即したライブに再構成することに至りました。
2022年で12回目を迎える豊橋ライブは、テーマを「豊橋ライブ 2022~ポストコロナ下に求められるライブの在るべき姿~ 」としました。 座学では、豊橋ライブに参加すれば特定の疾患(分岐部、石灰化、CTOなど)、新規デバイス(デバルキング、DES、ワイヤ、他)、および薬物療法(抗血栓療法、他)のその年に発表された臨床研究や活動がわかるセッションを設けます。また、従来から支持されてきたbailoutersやProfessionalsもさらにパワーアップした症例を準備いたします。豊橋ライブは常に時代の流れによって10年以上にわたり進化してきました。これからも皆様とともにカテーテル領域の発展のために、我々は進化を続けます。2022年6月21日から6月25日の5日間にわたり、オンラインで皆様と再びお会いできることを楽しみにしております。ともに循環器領域を進化していきましょう。
第12回豊橋ライブデモンストレーションコース
代表世話人 鈴木 孝彦