ごあいさつ

技と知の融合 ~さらなる進化を目指して~

循環器疾患の治療は、過去数十年にわたり飛躍的な進化を遂げ、特にカテーテルを用いた治療がその中心を担ってきました。PCI(経皮的冠動脈インターベンション)においては技術の向上や薬剤溶出ステント(DES)の登場により再狭窄のリスクが大幅に低下し、運動療法や至適薬物療法(OMT)の進歩に伴い、患者の長期予後は改善されました。治療デバイスは日々進化し、今日では複雑病変においても高い手技成功率と良好な慢性期成績が得られるようになりました。慢性完全閉塞(CTO)病変に対しては、近年Tip Detection and Antegrade Dissection Re-entry(TD-ADR)などが登場しており、合併症のリスクを抑えつつ、より効果的な治療テクニックとして世界から注目されています。

また、末梢血管治療(EVT)の分野では、複雑な病変を克服するデバイスやテクニックが用いられ、治療の選択肢が広がっています。シロリムス薬剤コーティングバルーン(DCB)も、今後の導入と普及が期待されています。これにより、従来治療が難しかった症例にも対応できる可能性が広がり、末梢動脈疾患に対する治療成績のさらなる向上が見込まれています。

構造的心疾患(SHD)の分野でも、左心耳閉鎖デバイスがさらに発展し、心房細動患者における脳卒中予防の治療オプションとして、今後のさらなる普及が期待されています。現在も内科的治療が難しい患者に対して効果的な選択肢として使用されており、今後さらに多くの症例で利用される可能性が高まっています。

不整脈治療においては、画期的なパルスフィールドアブレーション(PFA)技術が登場しました。PFAは従来の治療法と比べて周辺組織への影響を抑え、安全性と有効性を両立した新たな治療法として急速に普及しつつあります。これにより、心房細動などの不整脈に対する治療選択肢がさらに広がります。

さらに、心不全治療においても、ファンタスティック4として知られるSGLT2阻害薬、ARNI、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の登場が大きな変革をもたらしました。これらの薬剤は、心不全患者の症状を改善し、入院や死亡リスクの軽減に寄与しています。ガイドラインの改訂も続いており、心不全に対する治療薬のさらなる導入も見込まれています。

これまでも豊橋ライブデモンストレーションコースは、多職種が連携し、循環器疾患患者に対する最適な治療を議論する場として発展をとげてきました。PCIやEVTなどのカテーテル治療のみならず、SHD、不整脈、心不全といった循環器領域の最先端を包括的に学べるプログラムを企画し、多くの方々の支持を得ることができ今に至ります。我々は、循環器疾患で苦しむ患者を一人でも多く救うための「技と知」を皆様に提供することを使命に掲げています。

今年のテーマは、「技と知の融合Ⅱ~未来への連携と挑戦~」としました。昨年の「技と知の融合~さらなる進化をめざして」に引き続き、技術と知識の融合をさらに深化させ、新たに切り開く未来へのステージとして、本会を位置付けています。我々は、「ここで、学んだ知識と最新の技術を用いて目の前の患者を救う」という共通の目標を持ち、未来に向けた連携と挑戦を続けていきます。循環器治療の醍醐味をここから発信していきますので、乞うご期待ください。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

代表世話人 鈴木孝彦(豊橋ハートセンター)