The Professionals− ハイリスク患者の診断と治療戦略を探る −

本セッションでは疾患の診断が困難であった症例やハイリスク症例に対する治療戦略をエキスパートと共に探ります。
適切な診断に難渋した症例、原因不明の疾患、治療すべきかの判断に迫られた症例が全国から集まりました。

開催概要

6月26日(木)17:30-19:00  Room A 
座長天野 哲也(愛知医科大学) 上妻 謙(帝京大学)
コメンテーター 前川 裕一郎(浜松医科大学)

症例紹介

CASE 1

平野 賢一(大阪大学)
【症例】
50代 男性
【現病歴】
30代で心筋梗塞、多枝病変。その後、4度PCIを行うも狭心症は改善しない。
心室性不整脈有り。CABG施行も慢性期に死亡した。
【既往歴】
糖尿病、脂質異常症、CKD、SLD

Question. 若年患者の繰り返す狭心症と心室性不整脈の真相 - 背景にある疾患とは?

CASE 2

総大腿動脈仮性動脈瘤手術後の術後評価にて造影CT施行3時間後に胸痛を訴え緊急CAGを施行した70代男性の一例

富田雄一朗(聖隷三方原病院/菊川市立総合病院)
【症例】
70代男性。主訴は右鼠径部痛。
【現病歴】
2年前に狭心症の既往があり、LADに対してPCI施行、エベロリムス溶出性ステントを留置した。定期外来受診時に右鼠径部痛を自覚され、造影CTで右大腿動脈に仮性動脈瘤を認め入院となった。
【既往歴】
狭心症、高血圧、脂質異常症、ラクナ梗塞、膜性腎症
【生活歴】
喫煙歴なし、飲酒なし、アレルギー歴なし
【家族歴】
心血管疾患の家族歴はなし
【内服薬】
プレドニゾロン 5 mg、バイアスピリン 100 mg、ボノプラザン 10 mg、ロスバスタチン 10 mg、エゼチミブ 10 mg、ペマフィブラート 0.2 mg、アジルサルタン 10 mg、硝酸イソソルビド 40 mg、ミノドロン酸 50 mg/月
【入院時現症】
血圧 151/83 mmHg、脈拍 58 回/min、呼吸音 16 回/min、SpO2 98% (room air)
身体所見:心雑音は明らかではない、ラ音は聴取しない
【経過】
入院後、降圧目的でニカルジピン持続投与を開始したところ、第4病日に体幹部の発赤が出現した。薬疹を疑い、ニカルジピンから硝酸イソソルビド持続静注へ変更し、ロラタジンの内服を開始したところ、発赤は消失。第7病日に仮性動脈瘤に対する手術を施行し、第10病日にロタラジン内服を中止した。第16病日に術後評価目的で造影CTを施行した3時間後に胸痛が発現した。
【造影CT撮影3時間後の身体所見・血液データ】
血圧は保たれており、血液検査ではTnIの上昇を認めた。
心電図では、V2-4でhyper acute T、ST上昇を認め、心エコー図検査では、前壁-前壁中隔にかけて高度壁運動低下を認め、緊急CAGを施行した。
Question. 胸痛誘発の原因は何だったのでしょうか? 血栓症? 造影剤アレルギー? HIT?
どのような診断が下され、どのような臨床経過をたどるのでしょうか。

CASE 3

ステント内再狭窄による急性冠症候群を繰り返す1例

伊林 諒(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院)
【症例】
70代男性
【現病歴】
3日前からの労作時胸痛を自覚しており、前日から安静時に胸痛が出現するようになったため救急外来を受診した。
【既往歴/併存症】
2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症、急性膵炎
前壁心筋梗塞、下壁心筋梗塞、不安定狭心症(2回)に対して複数回のPCI、CABG(LITA-LAD、RITA-OM、GEA-4PD)歴あり。
【服薬歴】
aspirin 100 mg、rabeprazole 10 mg、Effient 3.75 mg、bisoprolol 2.5 mg、rosuvastatin 10 mg、ezetimibe 10 mg、desloratadine 5 mg
【血液検査】
白血球5800 /μL、好酸球 60 /μL、クレアチニンキナーゼ 177 U/L、HbA1c6.4%、LDLコレステロール 61 mg/dL、C反応性蛋白 0.09 mg/dL、トロポニンT 0.108 ng/ml.
【冠動脈造影所見】
右冠動脈のステント内再狭窄を認め、薬剤溶出性バルーンにより治療を行った。4ヶ月後に左回旋枝の慢性完全閉塞病変に対しても薬剤溶出性バルーンにより治療を行った。その際の対側造影で、 前回治療をした右冠動脈のステント内狭窄を認めた。
Question. 繰り返すステント内狭窄の原因は? どのように治療しますか?